ロマンスとひみつ
そこは温泉街の路地に
さりげなく紛れ込んでいる。
不思議に馴染んでいるけれど
異空間であることには間違いない。
図書室で整然と並ぶ本の中に
誰かが不意に入れた
ジャンル違いの本のような違和感と
なぜそこに?という好奇心が
掻き立てられた。
雨が降っている。
期待させるように弱くなったり
途方に暮れるくらい強くなったり。
朝起きてから何度窓の外を覗いたろう?
息苦しさがほんの少しずつ
積もっていく日常を飛び出したくて
旅に出た。
目的地はあの秘密の異空間。
非日常はいつだって、
すぐそこにあるもので
不意に触れてしまうものだ。
そこは、不思議な場所だった。
誰かの秘密の書斎。
ひみつ基地。
時間の流れがズレているような気さえする。
ふいに開かれたヒミツに
足を踏み入れる。
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