強風 〜青空喫茶ミチクサ 5
外で焙じ茶を飲もうと思いつつ、
暑いだの、疲れただの言い訳をしている間に
秋になりました。
そろそろ青空喫茶開店じゃないか?
などと思い、
すっかり重くなってしまった
腰を上げてみた。
近所の海は、風が強い。
冬になればなるほど風が吹きまくる。
そんな当たり前で大事なことを
忘れていた。
バーナーの火が風で流されて、
なかなか思うように煎茶に火が入らない。
そもそも正解も分かっていない。
時々香る焙じ茶っぽい香りと
我慢の無さで、
茶葉を煎る作業を終えて
お湯を沸かす。
ところがお湯もあと一歩で沸騰に至らない。
なんてこった。
強風に熱が持っていかれてしまう。
思わず空を見上げる。
テトラポットの隙間に嵌る小枝を見つける。
もう少し待ってみようかと
ぐるりと見回すと今度は貝殻。
その場所に辿り着くまでに
どんな経緯があったのだろう。
すっかり冷えてしまった肉まんと
煎茶のような焙じ茶のような
お茶をいただく。
お茶は綺麗な緑色だったので、
もっと煎らなくてはならなかったのだろう。
秋の日は釣瓶落とし。
どんどん薄暗くなる世界に慌てて
片付けをする。
もう少し喫茶セットを
コンパクトにしたいものだ。
色を失なう世界の中で、
嘘のように赤く染まる雲と
そんな雲を写しとる海。
風に吹かれるままに
世界の終わりのような景色に浸る。
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